【500-Vdue】<第7章:整備>(第18話:クラッチケースシール)〜目覚めよ!冥界の支配者〜
2026年 02月 13日

クラッチ関連のオイルシールは他にもあります。クラッチケース奥にある、このシール。

クラッチハウジングの外周と接触しています。
クラッチハウジングを外した際に、気をつけていないとプライマリドリブンギアがこのシールの上に乗っかってしまうので、リップに傷が付きやすくなっています。初見整備でゴリゴリやっちゃった感じがするので、ここは新品に交換しておきたい所。

サイズは内径55mm、外径70mm、厚さ8mm。

メーカーは例によってFP製
うわ〜、またFPかよ〜〜〜!!!

安心してください!NOKにあり・・・あ、あ、あり・・・

なーーーーーーい!!!
幅9mmのしかないじゃーーーん!
うーわ、オワタ。
え〜・・・1mmくらいならイケる?

ここのシールは図のように座面の無い場所に配置されているので、両側に0.5mmずつはみ出るくらいならおそらく・・・許容できるハズ。
圧入に関しても、ちょっとくらいなら・・・・
う〜ん・・・

で、寸法からAmazonで検索してみると、なんかありました。結構お高いので、良さげなオイルシールのように思われます。

発見したのはCFWというドイツ製のオイルシール。これの『BABSL』という種類のもので、10barまでつかえる高圧用シールでした。
dueのミッション室隔離用シールですので、高圧性能はほとんど必要ありません。とはいえ別に、高圧に耐えられるに越したことはないので使えないことはないでしょう。
しかし、10barまで耐えられる高圧用シールともなれば、そのリップの強度が気になります。シャフトの要求硬度がHRC45~60とあるように、それなりの硬さを持つシャフトである必要があるのです。
クラッチハウジングはアルミ製で、おそらくA7075材。A7075の硬度はブリネル硬さで150~160HB程度とされています。
これをロックウェル硬さのHRCに換算すると、おおよそ3。HRCたったの3でしかありません。
ですがちょっとタンマ。クラッチハウジングはハードアルマイト処理がなされていますので、アルマイトの表面硬度で考えることが出来ます。
一般的なハードアルマイトの硬度は、ビッカース硬さでHV400~500程度。これをロックウェルに換算すると、HRC40~50程度となります。
あ、ってことは大丈夫そ?
ちなみに高圧用じゃないオイルシールの場合、NOKによれば軸硬度はHRC30以上というのが推奨されています。

普通のオイルシールでさえHRC30以上が要求されており、ビッカース硬さに換算するとHV300程度。すなわち、ハードアルマイトで『余裕を持った』対応が出来るということになります。
高圧用だとギリギリ。低圧用だと余裕がある。

これは過去何度もお見せしている、tmのリンクとOリングとの摩擦による影響。もともとは真っ平らな部分が、Oリングとの摩擦によって丸く削られているのです。
ゴムvsアルミですから、普通の感覚だと柔らかいゴムの方が『弱い』ように思えますが、現実はその逆。金属側がゴリゴリ削られていきます。
tmはオフ車なので、泥などの混入もありますから、それがヤスリになってかなり極端な削れ方をしているのはあるでしょう。とはいえ、ゴムとの摺動は全く侮れないということもまた事実なのです。
シール交換の容易性や、漏洩した際に起こるマシン性能や環境への影響、危険性などから判断出来そうです。
<交換の容易性>
今回の場合、交換は非常に簡単。ケースの分解を行わなくとも、おそらくは交換出来るハズ。
<漏洩時性能への影響>
密閉対象はミッションオイルで、圧力の保持性は皆無。ですので、漏洩時における性能への影響は油量の管理のみ。
<漏洩時環境への影響>
漏洩箇所はクラッチケース内の奥なので、滲む程度であればケース内に溜まり、環境へ放出される量は限定的と言えます。万が一クラッチカバーの隙間から漏れ出てくる量になれば、どこかのタイミングですぐに気がつきます。
<漏洩による危険性>
場合によっては漏れたオイルがクラッチに付着し、滑りなどの原因になりうるとも考えられますが、『湿式クラッチ』というものがあるくらいですから、その懸念は杞憂でしょう。
それよりは最悪の場合、クラッチカバーの隙間から滴り落ちたオイルがリアタイヤに付着し、スリップする可能性はあります。
以上の点から、今回のシールに要求される密閉度はそれほど重要ではないだろうということが判断出来ます。最後のリアタイヤのスリップはやや注意すべきポイントではありますが、

dueのクラッチはほとんど丸見えですからね。漏れ始めの初期段階でおそらく気がつくハズ。
したがって、CFW製高圧用シールは『無意味な高性能』という結論に至りました。シールの密閉度を上げ過ぎるよりも、軸側の寿命を伸ばす方を重視した方が賢明であると言えます。

というわけで用意したのがこちら。
なんと、武蔵オイルシールから同寸法のタイプがあったので、それを購入することが出来ました。お値段なんと942円!安っすっす〜
気になる性能に関しては、NOKのSCシリーズ、及び純正であるFPのgシリーズと基本性能は同等。ただし、周速に関してはFPはデータが見つけられませんでしたが、NOKは約13m/secなのに対し、武蔵は12m/secとやや低いです。
なので、一応該当箇所の周速を計算してみます。
dueの最高出力発生回転数は9000rpm
↓
1秒では150回転
↓
1次減速比は2.166(約2.2とする)(※プライマリギア:プライマリドリブンギア)
↓
クラッチハウジング(=プライマリドリブンギア)回転数は1秒で約68.18回転(※150÷2.2)
↓
オイルシール内径円周長172mm(※φ55mm×3.14)
↓
周速11.726m/sec(※(172×68.18)mm÷1sec=11726mm/sec=11.726m/sec)
というわけで、まぁギリギリ大丈夫ということが判りました。dueで9000rpmで開け続けるのは多分現実的じゃぁないでしょうし、十分余裕があると見て良いでしょう。
したがって、『実用上問題無い』という最低限の性能は有していますので、クラッチハウジングへの攻撃性に鑑みて妥当な選択だと判断出来ました。
Amazonで気軽に購入出来るので、ひとまずこれで試してみることにします。
by tm144en
| 2026-02-13 00:51
| bimota 500-Vdue
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