測定器紹介⑦

(5428字)

測定器紹介⑦_e0159646_17214289.jpg

いよいよ最後の測定器、『マイクロメーター』。
『ひゃくぶんだい』の門を叩いた際、一番最初に出会うのがこのマイクロメーターと言っても過言では無いでしょう。


正しい使い方に関してはこちらのサイトで詳しく解説してありますので、ご興味のある方はそちらをご参照ください。



この中で、私の口から敢えて申し上げる点は2つ。



測定器紹介⑦_e0159646_17370762.jpg

まず使用前には必ず測定面の清掃を行うということ。ここにごく僅かなゴミやチリが挟まるだけでも、測定結果に影響を与えてしまいます。
方法は紙を挟んで滑らせるというのが推奨されたやり方。ティッシュなどで拭くと繊維質が残ることがあるので、この方法が一番確実とされています。

(ここだけの話、実際はティッシュで拭いたり指で拭いたりしてますけどね笑)
(測定の重要度でやり方は変わります)


空気中を漂っているチリの中でよく耳にするのが『PM2.5』。これは、サイズが0.0025mmの微粒子のことを指しています。0.002mmはマイクロメーターで充分検出可能なサイズです。



測定器紹介⑦_e0159646_17432941.png


以前も書きましたが、シンブルとスリーブの線の重なりが、半分ズレる位置が0.001mmとして読めるとされているので、もしPM2.5のチリが測定面に挟まっていたら線の太さ分がズレるということになります。

空気中を漂っている浮遊物の中には、大きいの物で0.1mmまであると言われています。そんな大きなものが挟まってしまったら公差では済まされませんので、測定前にしっかり清掃することは非常に重要なこととなります。

そしてもう一つ重要なのが『ゼロ位置合わせ』。

上記の清掃を行なったあとに、スピンドルをアンビルにラチェットで適切に「カチカチ」押し付け、その位置できちんとメモリがゼロに揃っていることを確認します。これがズレていると、全ての測定結果がオフセットしてしまいますので、これも測定前に必ず確認する必要があります。

ちなみに聞いた話ですが、トヨタの整備士資格の試験でも、マイクロメーターのゼロ位置合わせをしたかどうかが採点に含まれているそうです。
これを怠るなら、1/100mmの世界に入ってはいけないということになりますね。

(ここだけの話、毎回合わせてはいませんけどね笑)
(測定の重要度に合わせて適宜行います)


なぜそんなに頻繁にゼロ位置を確認しなければいけないかと言いますと、単純にスリーブが回ってしまうからです。そもそもゼロ位置を合わせるには、スリーブをフックレンチで回すだけなので、その構造ならなにかの弾みで回ってしまうことは十分にあり得ます。


というわけで、ここまでは0~25mmスケールのお話。

25~50mmは少し変わります。




測定器紹介⑦_e0159646_18034199.jpg



25~50mmスケールは、スピンドルとアンビルが接触しませんので、ゼロ位置を合わせるには基準棒を使用する必要があります。


で・す・が


ここで要注意!!!


そもそもこの基準棒。ちゃんと25.000mmですか?というのを確認する必要があります。

つまり、




測定器紹介⑦_e0159646_18004508.jpg


まずはきちんと清掃・調整された0~25mmのマイクロメーターを用意し、それで基準棒を測定。25.000mmであることを確認しなければなりません。
まぁ著名なミツトヨ製ならその必要は無いかもしれませんが、ストレート製やその他の安価なマイクロメーターに付属している基準棒の長さは信用してはなりません。
かくいうこの基準棒。25.01mmあります。

なので、この基準棒で25~50mmスケールを調節する際、25.01mmに合わせることで対処します。つまり、基準棒は何ミリでも良いのです。
ただし、基準棒の両接触面の平行度。これは非常に重要です。そもそもマイクロメータ側のスピンドルとアンビルの測定面の平行度も重要ですが。
それらの面。つまり4つの面全てが極めて高精度な平行が出ていないと、そもそも測定のスタートラインに立つことすら出来ないということになるのです。

ちなみにこの25mmの基準棒。平行度がちょっとアヤシイ。


測定器紹介⑦_e0159646_23324351.jpg

光で透かして、明らかに隙間が出るレベルではありませんが、なんか噛み合わせがしっくりきません。
こういうところで安価な製品と高価な製品の差が生まれてくるわけですね。

幸いにも、マイクロメーターの方の平行はキッチリしているので、実際の測定に影響はありません。

そしたらお次は、



測定器紹介⑦_e0159646_18130573.jpg


この合わせた25~50mmスケールのマイクロメーターで、50mmの基準棒を測定し、




測定器紹介⑦_e0159646_18125870.jpg


50~75mmスケールのマイクロメーターのゼロ位置を合わせます。

そう。この様に最初の基準を次々『トレース』していく様。これこそがまさに、先日から匂わせていた『トレーサビリティ』。



測定器紹介⑦_e0159646_18300752.png


本来の『トレーサビリティ』とはもっと大きな尺度でして、メートルの定義である光の速さを頂点とし、それを各国家がそれぞれ国家基準として定め、以下の事業者にトレースさせていくということを言います。
それはまるで、古代から脈々と受け継がれる天皇家のY遺伝子のように。
神武天皇を初代と定義し、絶え間なく(絶えた説もありますが)『コピー』されてきた男系血族そのものと言っても良いでしょう。

これが日本なら『JIS 規格』と呼ばれますし、ドイツなら『DIN規格』となります。なので、同じメートル使用圏でも、国が違うと僅かに精度が違う!という実例が時折見受けられますが、その原因はこの『トレーサビリティ』にあるのかもしれません。メートルの定義は変わりませんが、それをトレースした一番最初の『国家』の時点でごく僅かなズレが生じる可能性は考えられますし、以下の事業者にトレースしていく段階でもその環境によってはズレが蓄積していくこともあるでしょう。

そういう意味では、たとえ国内であっても『なるべく上の方でトレースされた製品』の方がより高精度であるということが言えます。というのも所詮はトレースですので、回数が増えるたびにわずかずつでも劣化は進んでしまうからです。

ここからは私の想像ですが、このトレーサビリティは、ある種『ヒエラルキー』と言える側面があり、要するに上に行きたければ『金がかかる』ということではないかと推察しています。
つまり単純に言えば、高価な測定器であるミツトヨ製はヒエラルキーの上位に位置しており、それより下の企業が作る製品は『ちょっと劣る』ということではないでしょうか。

さらに想像を膨らませると、こういったものには往々にして『利権』やら『独占』といったものがあるでしょうし、いろいろな人々の思惑が交錯する世界があるのではないかと、思いを馳せたりもします。


そんなヒエラルキーの最下層に我がだいちゃんガレージがあるわけですが、この中はこの中で他者とは区切り、『だいちゃんガレージ的トレーサビリティ』あるいは『だいちゃん規格(DCN規格)』として独自に管理するというのが今回の話の本質となります。

例えば先ほどのマイクロメーター。ミツトヨ製の基準棒は、ミツトヨ規格つまりヒエラルキー上位の基準で作られた基準棒ですので、製品精度としては優位な立場にあると言えます。

しかし、50~75mmスケールのマイクロメーターはミツトヨの基準棒で調整し、25~50mmスケールのマイクロメーターは別の基準棒で調整していたのでは、この2つのマイクロメーターの間に齟齬が生まれる可能性があることになります。

実際問題として、25~50mmスケールのマイクロメーターに付属していた基準棒は、25.01mmあったわけですから、それを25.00mmと定義してマイクロメーターを調整してしまうと、50~70mmスケールのマイクロメーターとの整合性がとれないということになってしまいます。

したがって、相互間の整合性を取る。すなわち『基準』をもとにしっかり調整することは非常に重要となるわけです。

そういった観点で考えると、じゃぁ『何を』だいちゃんガレージの基準とするか。言い換えると、『だいちゃんガレージ的トレーサビリティ』の頂点には何を据えるべきか?というと・・・





測定器紹介⑦_e0159646_17242533.jpg


実はこの0~25mmのマイクロメーターが、最も『基準』としてふさわしいということになるのです。というのも、『ゼロ位置』はスピンドルとアンビルが直接接する状態ですので、物理的に絶対と言っても過言では無いでしょう。基準棒を介すると、その基準棒のトレーサビリティーが必要になりますが、直接接触に関しては立ち入る隙がありません。

とはいえ、それは先ほども述べた通り、スピンドルとアンビルの接触面の平行度や面精度が担保されていることが前提となります。ですので、せっかく頂点に置くべき測定器なのであれば、ストレート製ではなくこれこそミツトヨ製にすべきだなぁとは思いますが、まぁそれはそれとして。


そしてこの話は当然スケール違いのマイクロメーターだけの話に止まらず、前回ご紹介したダイアルゲージやシリンダーゲージにも当てはまってきます。




測定器紹介⑦_e0159646_20135238.jpg


例えばシリンダーゲージに関しては、マイクロメーターで合わせるという是非はありつつも、開き直って『これをだいちゃんガレージ基準とする』と定義してしまえば、それはそれで一定の精度が担保されることになります。

ですので、だいちゃんガレージ内で製作されるはめ合い部品であるといった場合においては、高精度に作り上げることが出来るということにつながります。
ただ、よそで作られたものに対してはその限りではありませんので、それはケースバイケースで判断していくしかないでしょう。



測定器紹介⑦_e0159646_20182046.jpg


他にも、フィラーゲージは都度マイクロメーターで厚みを確認し、マイクロメーター側の値を参照するというのも『だいちゃんガレージ的トレーサビリティー』の一貫と言えます。





測定器紹介⑦_e0159646_20194595.jpg


そしてそのフィラーゲージの値を元にノギスを測定。メモリの位置の精度を確認することが出来ます。




測定器紹介⑦_e0159646_20204791.jpg


さらには定盤の上でダイアルゲージでそのフィラーゲージの値を測定することで、ダイアルゲージの精度の確認も行うことができます。

ただしこれは、ダイアルゲージが正確に垂直になっていることが前提となります。画像にある自在アームで直角を出すのは難しいので、専用の物か、きちんと直角が担保されるアタッチメントを作って測定する必要があります。

とはいえ、

0.1mmのフィラーゲージであれば、仮にダイアルゲージが1°傾いていたとした場合、表示される値は実際よりも+0.0017mmとなります。1/100mmレベルの話であれば、充分高精度と言っても良いでしょう。

この様に、それぞれの測定器において『校正』という作業が必要になるわけですが、それを全て外注に託すことは費用面でも時間の面でもなかなか現実的ではありません。
ですので、例えば今回のように0~25mmスケールのマイクロメーターを基準に自分の持ち物の校正は自分で行うというのが現実的なのかなと思います。それを『だいちゃんガレージ的トレーサビリティ』と呼んでいるわけです。

そういった構造を構築出来るのであれば、仮に外注で校正に出すとしても0~25mmスケールのマイクロメーターだけで済み、それによってだいちゃんガレージ規格をJIS規格とすり合わせることが出来るということになります。


とは言うもののそれはあくまで理想論であり、現実はなかなかそううまくいかないわけですけども。



測定器紹介⑦_e0159646_23345737.jpg

というわけで、長い長い測定器紹介シリーズもいよいよラスト。最後を飾るのは内径用マイクロメーター。


上が安物中国製で、下が高級ミツトヨ製。同じスケールの物ですが、2個ある理由はただ一つ。


「安物はイカン!!」



測定器紹介⑦_e0159646_23350263.jpg

メモリやシンブルの動きなどは、安物とてそんなに不具合があるわけではありません。ですが、いっっっっちばん肝心な所で安物は作りが悪い。

この内径用に関してはこの測定端子の精度及び接続部との直角度が命となります。上の画像を見れば、どっちがどっちかは目瞭然ですよね。
ここがキッチリ仕上げられてないと、測定時に値がコロコロ変わってしまうのです。中国製を使っていた時は、ちょいちょい『はめ合い』に失敗していましたが、ミツトヨ製を使ってからは殆ど失敗することは無くなりました。



測定器紹介⑦_e0159646_23461140.jpg

この内径用購入時に、5mmのセットリングがセットされていたので、それで位置合わせを行うべきであるとは思います。思いますが、これでも先ほどから述べている『だいちゃんガレージ的トレーサビリティ』の流れに乗せるため、敢えて0~25mmスケールのマイクロメーターで測定値を確認するようにしています。

使用する時は外径の測定と同時である場合が多いので、ゼロ位置合わせというよりは、その時に必要な値で都度確認するといった使い方をしています。
先日述べた通り、外径用マイクロメーターのこの使い方は真の値とは少し外れている可能性がありますが、この方法で致命的な失敗をしたことはないので、まぁ問題は無いと言って良いレベルだと認識しています。


ーーーーダイアルゲージやマイクロメーター。ひいてはデプスゲージやハイトゲージなど、以前はなるべく『安い物』で済ませようとしてきました。しかしこの内径用マイクロメーターの失敗を機に、「もう二度と安物は買わない!」と誓い、以来測定器はミツトヨ一択としてきました。(製品のある場合に限り)

『ひゃくぶんいち』の世界を極めようと切磋琢磨している時に、稚拙なツールで寄り道している暇などありません。

腹括って覚悟を決めて。オレンジの海に飛び込むことが、幸せへ続く道であると信じて・・・





名前
URL
削除用パスワード
by tm144en | 2026-01-22 00:27 | Comments(0)

カメラとバイクとエトセトラ


by だいちゃん