【500-Vdue】<第7章:整備>(第8話:クランク芯出し④)〜目覚めよ!冥界の支配者〜

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『bimota 500-Vdue』のクランクシャフトの芯出しを行います。

前代未聞!




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まずは左右の最大値の位置に黄色いテープを貼ります。右はピンの位置ピッタリに来ていますが、左は少しズレていますね。




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最小値には青いテープ。概ね180°反対側といった感じです。

クランクは以前の測定とは逆向きとなり、改めて測定したところ右が0.024mm、左が0.015mmという値になっていました。なんで変わった?




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テープの位置をもとに模型で考察すると、おそらくこんな感じだろうというのが判ります。




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左の方がピンを上にして奥側に少しズレています。
芯出しの順序としては、まずは2次元的な『ハの字』にするため、前後ズレの方を先に修正する必要があると考えています。左右の最大値と最小値の位置を揃えるのが先決。





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ですのでまずは、この向きで1発叩いてみます。




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クランクを持つ左手には、ゴムが貼り付けられた防寒手袋が最適でした。ハンマーの衝撃がそのまま左手に伝わってきますが、防寒ボアが入っていることで衝撃を吸収。さらにゴムが滑り止めになるので、安定して持つことが出来ました。




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持ち方はこんな感じで、手首を向こう側にしてかかえこむようにしています。そしてその左手は膝の上に置いて位置を固定。
こうすることで姿勢が取りやすく、ハンマーを振り下ろす位置を安定させることが出来ます。

叩く時はクランクを支える力がコンロッドに伝わるといけないので、コンロッドは常にフリーの状態にしておきます。

ハンマーの叩き方は『ゴンッ』と1発。




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振れ幅は0.015→0.007となり、最大値の位置も少しピンの方に近づきました。この調子!




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しかし、それ以降は叩いても振れ幅が変わることはなく、基準点の位置がだんだん高くなっていきました。これは練習の時と同じ現象かもしれません。





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つまり、こんな感じでズレている可能性が考えられます。




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なので、叩くとしたら、こっち向きでこう。




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それによって、左の振れ幅は0.005まで来たのですが、逆に右が0.02mmとちょっとズレが大きくなってしまったようです。ですが、どちらも最大値と最小値の位置が揃ったので、これでようやく2次元的な『ハの字』になってくれたと言えるでしょう。




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『ハの字』を修正する時は、ウェブの下の方を叩きたくなる所ですが、ピン側の方を斜めに叩くのが正解なのだそう。




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というわけでこの辺を叩きます。




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1回・・・では流石に変化が無く、何度か叩いてようやく0.02→0.016mmにまでなりました。が、まだ全然足りない。







『叩く回数はできるだけ少ない方が良い』は、それはその通りですが、とはいえ修正されないのだから叩かざるを得ません。

今回の場合、修正方向が迷子になってアッチコッチを叩いているわけではなく、叩く力の不足で同じ場所を同じ方向に何度も叩いているだけなので、回数が多いことの影響は殆ど無いだろうと考えています。

だって動かないんだもん!

しかし、0.016mmまでは修正されたものの、それ以降は全くの変化ナシ。何度叩いてもこれ以上動くことはありませんでした。


いや、どーなってんの!?

もしかして、ロックタイトでもブチ込んであるのではないか?



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何度も何度も叩いていると、だんだん針の初期位置が変わってきました。これは一体・・・?

これでもようやく0.015mm。何十回も叩いて1/1000mmしか変わっていません。




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かくなる上のヒートガン。熱してはめあいがほんの少しでもユルくなれば、動きやすくなるかもしれません。ただし、クランクピンはおそらくSUJ2なので、焼戻し温度である160~180°に達すると硬度が低下してしまいます。なので加熱のし過ぎは厳禁。したがって殆ど気休め程度の加熱しか出来ませんが、それでもやらないよりはマシなハズ。




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お!?

だいぶ来たんでない!?0.015→0.01mmまできました!
しかも、いつのまにか左は1/1000以下になっています。


もうちょいだ!




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0.01→0.007mm

ようやく1/100以下まできました。
これでも充分と言えるのですが、左がセンブンダイまで出てしまった以上、どうしても欲が出てしまいます。

しかし、ここから先はどーーーー頑張ってもこれ以上動いてはくれませんでした。叩いた回数は有に100回を超えていると思いますが、もう『ビクともしない』といった感じです。

で、叩きながら色々考えていたのですが、もしかするとこれが『製品精度の限界』なのかもしれません。
というのも、元々のはめ合い面の真円度以上の精度は、物理的に出せないのではないかと考えられるからです。

つまり、ピンを圧入した際ハウジングとの芯がズレた状態になると、クランクが偏心状態となります。それを叩いて修正するわけですが、『斜めに入ってしまったものを真っ直ぐにする』ことは出来ても、『真っ直ぐになっているものをちょっとだけ斜めにする』ということは出来ないのではないかということ。

プレスの力で斜めになってしまうことはあっても、ハンマーで叩く程度ではピンを斜めにするほどの力は発生させられない。

逆に言うと、プレスで斜めになった状態であれば、叩く衝撃によってスルリと『具合の良い位置』に収まる。この『具合の良い位置』というのがピンとハウジングの『真円度』に準ずるということではないかと考えられるのです。

したがって、ピン、もしくはハウジングが、ごくごくわずかでも真円では無い状態にあれば、物理的に偏心ゼロには持っていくことが出来ないのではないでしょうか。

tmのクランクは、組み付け後職人が1〜2回衝撃を与えるだけで、両サイドとも1/1000mm未満を達成していると聞きます。これは、職人の『技』に依るところは当然大きいと思いますが、それ以上にそもそもの部品精度が恐ろしく高いというのが前提にあるのかもしれません。


例えばベアリング。これには『等級』というものが定められており、0級→6級→5級→4級→2級の順に高精度になるとされています。一般的に普及しているのは、一番精度の低い『0級』。一番高精度な2級は、ジェットエンジンなどに使用されるのだそう。

つまり、見た目は同じラジアルボールベアリングだとしても、中身に雲泥の差があるというのは工業製品である以上避けては通れません。高精度なものは値が張るのです。
(※ですので、クランクベアリグに『0級』のベアリングを使用するのは如何なものか?・・・と思うわけですが・・・)

したがって、クランクウェブに空ける穴の加工精度、クランクピンの真円度においても、見た目は同じ材料に見えてもその『精度』に雲泥の差があれば、偏心量にも大きく影響してくるのは自明の理と言えます。

『勝つこと』を宿命づけられたtmのエンジンと、『環境に配慮すること』を使命とされたdueのエンジンでは、求められる部品精度や工作精度は似て非なるものと言えるでしょう。


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ここが妥協点


・・・・なのかもしれません。








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by tm144en | 2026-01-10 00:42 | bimota 500-Vdue | Comments(0)

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