【500-Vdue】<第6章:サスペンション>(第35話:窒素ガス充填) 〜目覚めよ!冥界の支配者〜
2025年 10月 17日

ダンパーO/H最後の工程は『窒素ガス充填』
通常は窒素ガスのボンベを用意し、レギュレーターなどを取り付けてガス充填を行います。しかし個人でアレを用意しても、使用頻度が低過ぎて使い切れる気がしません。
値段もそこそこ高いですから、もう少し費用を抑えたい。
そこで考えたのが『サスペンションポンプ』

チャレンジの車載工具として純正装備されていたものなのですが、これを使って窒素ガスを充填するのです。手動式ポンプのハンドルのスライド部分の隙間から空気を吸い込む構造になっているので、厚手のビニール袋でハンドル部全体を覆い、ここに窒素ガスを充填させることで、ポンプから出てくる空気も窒素ガスになるという仕掛け。

サスペンションポンプなので、最大20bar(20気圧)まで充填することが出来ます。
過去のダンパーO/Hの時は、すべてこれを使用してきました。

今回はまず、袋が古くなってきたので、新しいものに取り替えるところから作業を始めます。ビニールは極厚タイプで出来るだけ大きいものを使用。

ビニール袋をこの様にハンドル部分を覆ってかぶせ、筒の部分にビニールテープでしっかり固定します。
で、
ここに入れる窒素ガスですが、以前までは缶スプレー式のものを使用していました。
ネットで購入できるものの中では、リーズナブルなところで言えば『実験用』とされているものが700円ほどで購入できます。

しかし、これは窒素純度が95%と少し低いのがネック。バンバンのリアダンパーにはこの実験用を使用し、まぁ別に作動に影響はありませんでしたが、tmやDB7には使いたくないですよね。
なので純度99.99%という缶スプレー式の窒素ガスというのも売っており、これだと1缶10000円程します。

1回の充填で10000円と考えるとちょっと尻込みする値段ですが、利点もあります。それは純度が99.99%という点。
通常の窒素ガスボンベの方は、純度が99.5%なので、ちょっと低いんですよね。なのでサスペンション屋さんなどにお願いするとおそらく純度99.5%の窒素ガスが入れられているのだと思われます。
それを考えると、自己流で純度99.99%を入れるという『コダワリ』はアリな気がしてきます。バンバンなら実験用でいいやって感じですが、オーリンズやエクストリームテックに入れるためなら10000円も厭わないと思えてきます。
ちなみにこの缶スプレー式の窒素ガス。内容量は『5L』となっており、スプレー噴射時間は数秒ほどしかありません。消臭スプレーみたいにいつまでも出てくるものでは無いので注意が必要です。
購入者のコメントに『あっという間に無くなった!詐欺だ!」と騒いでる人がよくいるのですが、商品概要欄に『5L』と記載されているので『気体が5Lの体積』をよく理解していれば、その少なさに気が付くはずです。

サブタンクに使用する量はわずかですので、このスプレー缶1本で足りることは足ります。
ーーーーというわけで、今回もその純度99.99%の窒素ガスを用意しようと思っていたの
でーすーーがーーー!!!
Amazonを散策中、いいものみっけちゃったんですよね〜。
それがこちら。

よくあるパンク修理用の携帯ボンベにあるような、密封式のタイプ。14L入りのボンベが2本とレギュレーターがセットになったスターターセットでなんと13000円とあるじゃぁないですか!そして勿論純度は99.99%!
レギュレーターがあれば今後は1本1500円ほどのボンベだけで済みますので、大変経済的なのがありがたい!ぶっちゃけスプレー缶1本10000円は結構痛かったですからね。
しかも14Lもあるので、贅沢に使用することが出来ます。後ほど書きますが、この『贅沢に』のところが重要なのです。

というわけで届きました☆
付属の2本の他に、おまけの1本もついてました。食品用のものは純度99.995%以上!

レギュレーターにはこのアタッチメントを取り付けて、

先ほどのビニールの一角に穴を空けて差し込み、ビニールテープで固定します。

ここにこの様にボンベを取り付けるわけですが、締め込みながらボンベの封が破られて中の窒素ガスが放出される仕組みになっているので、一瞬の作業となります。ねじ込むのに手こずると窒素ガスが大気にどんどん放出されてしまうので、しっかり体勢を整えておく必要があります。

レギュレーター側をこの様に安定したバイスに固定し、この状態でボンベを一気にねじ込みます。
1・・・
2の・・・・
3っ!!!!

大成功!!
少しも漏れることなく、1発でキマりました☆
そしてレギュレーターのバルブを開くと・・・

「プシュ〜〜〜」と窒素ガスがどんどん出てきます。さすが14L!5Lの缶スプレーとは比べ物になりません。
取り付けた袋がパンパンになるくらいで、ちょうど14L全て出し切りました。
そしたら、勿体無いんですけどこの入れた窒素ガスを一旦全部絞り出します。

そう。最初に袋内に残っている大気中の空気がありますので、それを一旦窒素ガスで『洗う』必要があったのです。この作業がどうしても必要なので、5Lの缶スプレー1缶だとちょっと役不足だったんですよね。1回目は缶スプレー2缶使い、2回目以降は袋をつけっぱなしにしておけばこの洗浄作業は必要無いと言えるのですが、数年放置した中身がちゃんと窒素だけなのか?というとちょっと疑問が残ってしまいます。
今回はちょっと贅沢にボンベ1本使ってしまいましたが、10Lで洗って4Lを充填でも良かったかもしれませんね。まぁ、吐出量の測定は出来ませんけども。

というわけでボンベ2本目。レギュレーターがあるので全量入れなくても良いのですが、『純度99.99%』という側面を考慮すると、やはりなるべく潤沢に使用した方がその効果が高いことになります。袋を絞ったといえど、完璧とは言えませんからね。なので、洗浄の工程でボンベ1つを3回くらいに分けると理想的でしたね。

窒素ガス充填後はアタッチメントだけ残して、しっかり折りたたんで密封しておきます。

準備が整ったので、いよいよサブタンクへの充填を行なっていきます。

ハンドポンプ操作時に注射針がグニグニ動いてしまうので、ホースの部分をテープで固定しておきます。注射針を刺してるゴム栓が緩くなってはいけませんからね。
で、いきなり充填するのではなく、サブタンク内に残っている空気を洗い出す必要があります。これ、サスペンション屋さんに出してもちゃんとやってくれてるんですかね?
プラダ式を採用しているダンパーなら、正直大気の空気でも良いっちゃ良いと思いますが、スライドピストンを採用しているタイプだとOリングの隙間からフルード室の方へ気体が侵入してしまうことが懸念されます。

プラダ式
窒素は酸素や二酸化炭素よりも分子が大きく、パッキンなどの隙間からは漏れにくいとされているので、出来るだけ純度の高い窒素でサブタンク内を満たしておくのが理想的と言えます。
なので、まずは1.5~2キロくらい入れたら抜く、入れたら抜くを何度も繰り返し、サブタンク内の窒素純度を上げていきます。これ、たとえば10キロとか入れちゃうとだめなんですよね。99.99%の純度と言っても、0.01%は不純物が混ざってるわけですから、10気圧にすると0.1%分の不純物が残ってしまうことになります。(割合としては0.01%だが、体積は1気圧換算で0.1%の分に相当という意味)
この作業が多ければ多いほど、サブタンク内の窒素純度を上げることが出来るので、10回でも20回でも繰り返します。

ひとしきりガス交換を行ったら、最終的な圧力は11.5bar。165psiとも言われていますが、このあたりまで圧力を高めます。ハンドポンプなので、1ストロークの10分の1しか充填されないことになるので、これはなかなか大変な作業。
充填が終わったら注射針を「スッ」と抜き取れば自動で栓が閉まるので、タンク内の圧力損失を防ぐことが出来ます。ゴム栓マジ優秀。

ようやくここまで完成しました☆
あとはもうチャチャッと組み立てるだけ。

スフェリカルベアリングの部分にはグリスを塗ってスポンジパッキンを装着。オーリンズのこのパッキン。スポンジの様な材質なので、当然水を吸い込みます。なのでグリスなどで防水処置を施し、洗車後もオイルスプレーなどで油分を追加しておくのが良いでしょう。
そ・し・て・・・

完成〜〜〜〜\(^o^)/☆☆☆

いや〜〜〜感無量っス!
何度もやったことのある作業ではありますが、やはりリアショックを自分でO/H出来るのは感慨深いものがありますね。バイク乗り始めた当初の感覚では、『ブラックボックス』だと言われてましたし。
それもこれもネットの恩恵があってこそ。オーリンズ純正部品や窒素ガスの入手を始め、ガス圧やチタンコーティングの情報などネットが無いとなかなか得ることができない物ばかりです。
とはいえ、道具と情報があるだけで出来るということではなく、構造を理解して自分なりに切磋琢磨することも重要です。それ自体を『楽しみ』として捉えられないなら、サスペンション屋さんに出す30000円の方が遥かに『お安い』とも言えます。
裏を返せば「30000円払うから、俺のヤツやって!」と言われても、私はやりたくありません。めんどくさいが勝ちます。
『自分でやった方が安いから』という理由では、決してオススメ出来ません。自分なりのコダワリを強く持っていたり、機械いじりが好きな人なら『楽しい』という気分が味わえる。
「ツーリング行くの楽しい」と同じように、「ダンパーO/Hが楽しい」
こんな楽しいこと、人任せにするなんて勿体無い!・・・と、私は思うわけです。

もとはと言えば、バンプラバーが朽ち果てていたことが発端でしたが、ロッドの傷も目立ったのでゴールドチタンコーティングも施しました。シールとの相性の面で100%効果のある処理とは言えませんが、自己満足度は100%です。
(※シールとの相性を重視するなら、クロムナイトライドがおすすめ。)

ちなみに、窒素ガスは余裕で余ってしまいました。2本使ったのはもったいなかったですね。今回初めてあのボンベを使ったので、いろいろ勘所が掴めていませんでしたが、次回からはもっと効率的な使用が出来ると思います。
いや〜多分昔は無かったんですよね。安い窒素ガスは結構探しましたから。なので、今回すごく画期的でした。
ーーーーさてさて、ダンパーO/Hが完了したのは良いですが、その前にもっともっと重要なことがあるわけですよ。

そう。クランクベアリングを外さなければいけないわけでして・・・
by tm144en
| 2025-10-17 00:05
| bimota 500-Vdue
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