【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜
2025年 08月 26日

お話はクランクケースの測定に移ります。

今回は容積ではなく、クランクの幅とケースの幅の測定となります。

というのも、このオイルシール。ケースを分解した時に「アレ?」と思ったのですが、クランクウェブに対してスレッスレなんですよね。
なので、クリアランスがどうなっているかを調べるために、全体を測定します。

とはいえ、ちゃんとしたデプスゲージを用意していないので、今回はとりあえずノギスによる簡易測定で様子を見てみます。
ケース座面に上下面サーフェース仕上げのプレートを置き、それを基準にベアリング内輪までの距離を測定。

続いてクランクウェブのシール部分の幅も測定。

以上の測定結果を元にして図に起こします。

測定値は上クランク左側だけ0.01mmの違いがありましたが、ノギス測定によるものなので一旦無視。上下左右はほぼ揃っていると仮定し、おそらく設計上はこうであろうという形で図に表しました。
まずクランクウェブの出っ張り部分。オイルシールと擦れる部分の幅は、実測で6mmとなっています。ただしこの出っ張り。ウェブと一体形成になっており、切削のr加工が施されているので有効幅は5~5.5mm程度となります。
オイルシール幅は5.5mmとなっていますが、カタログ値では5mmとのこと。しかし、シールに『55』という記載があることと、実測で5.5mmくらいの厚みに読み取れることから、今回は幅5.5mmとしました。オイルシールはイタリアのオイルシールメーカーであるFP製の物が採用されているのですが、もしかすると現在では同寸法のものは取り扱っていないのかもしれません。
このオイルシール。形状が特殊で、図の断面形状の通り台形っぽい形をしています。そして、その台形の部分である約1.5mmの厚みが、1次圧縮容積側の空間に飛び出す格好となっています。なので、ケースに圧入されている厚みは4mm分。
クランクの出っ張り部分の幅が実測で65mm、クランクベアリングのクリアランスは65.3mmでした。したがって、両端に0.15mmずつの隙間が設定されていることが解ります。
これはラジアルボールベアリングにおける『固定側軸受』と『自由側軸受』の概念によるもので、高速回転による発熱とそもそものエンジンの発熱によって、運転時のクランクシャフトが軸方向に熱膨張することが前提とされています。
・・・・の、はずなので、それを確認します。




図にするとこんな感じ。
そうすると固定側のオイルシールとのクリアランスが0.5mmになるので、r加工を踏まえるとかなりギリギリの設計になっています。
そして実際の熱膨張に関しては、単純計算となりますが温度変化を60度と仮定すると、クランクシャフトの伸びる量は約0.07mmとなります。したがって固定側を始点とし、自由側のすき間0.3mmが多く見て0.2mmほどまで『詰まる』ということになります。その時、オイルシールとクランクウェブのクリアランスは0.7mm。
以上の内容から、全てのクリアランスに「設計上の」問題は無さそうであるということが解りました。
そう。図面の上では問題が無かったハズのものでも、実際は違うわけで・・・・

それがこちら。
4ヶ所のシールのうち1ヶ所だけ傷が入っていたのです。ここはジェネレーター取り出し部になるのですが、ここのシールだけ圧入がちょっと甘くて飛び出した状態になっていたんですよね。おそらくクランクウェブと擦れたのではないかと考えられます。
冷間時には、ウェブとのクリアランスは0.8mmの設定になっており、温間時は想定0.7mm程度。なので一応『設計上』に問題は無くとも、組み付け方が悪ければこのような事態になってしまうわけです。
その原因は単なるシールの打ち込み不足か、あるいはベアリングが奥まで入っていないのか。はたまた、ベアリングの座面の削り(深さ)が足りないという可能性も考えられます。
また、クランク出っ張りの根元のr加工によって有効幅が減少していることも挙げられます。それにそもそも、クランクの芯が0.2mmというレベルの振れが確認出来ているので、偏心したウェブの影響も複合的に発生しています。
設計上わずか0.7mmのクリアランスを維持するためには、それ以外の要素に全くの不備があってはいけないということ。
いずれにせよ、原因を確実に特定するためにはシールとベアリングを取り外す必要があるのですが、その場合新品のベアリングとシールを入手してからでないと作業が出来ません。
最悪ベアリングは再利用出来るとしても、シールは外す時に綺麗に外せませんから再利用は不可。外したは良いけどシールが入手出来なくて『詰み』になってしまってはいけないので、現在FP社に入手の可否を問い合わせ中となっています。
今回のシールと同寸法のものはFP以外で発見することが出来ませんでしたので、汎用同等品は期待薄。寸法変更を考えるか、特注で依頼するしか方法は無いでしょうね。
ただ、現在の品番によれば幅は5mmとなっているので、0.5mm分余裕のある設計に変更されているんですよね。もしかするとdueの為だったりして???
イタリアの有志の方の情報によれば、「このオイルシールには問題があったから対処した」とされているのですが、その方法が砂型で『ケースの作り直し』となっていたので、流石に私の努力の範疇を超えています。なので、現状では純正シールをなんとしてでも入手しなければならないということになります。
いや〜面白くなってきましたよ〜\(^o^)/♪
by tm144en
| 2025-08-26 00:00
| bimota 500-Vdue
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