【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜

【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23414653.jpg

お話はクランクケースの測定に移ります。



【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23414662.jpg

今回は容積ではなく、クランクの幅とケースの幅の測定となります。




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23481107.jpg


というのも、このオイルシール。ケースを分解した時に「アレ?」と思ったのですが、クランクウェブに対してスレッスレなんですよね。

なので、クリアランスがどうなっているかを調べるために、全体を測定します。



【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23481182.jpg


とはいえ、ちゃんとしたデプスゲージを用意していないので、今回はとりあえずノギスによる簡易測定で様子を見てみます。

ケース座面に上下面サーフェース仕上げのプレートを置き、それを基準にベアリング内輪までの距離を測定。




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23524531.jpg


続いてクランクウェブのシール部分の幅も測定。




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_23534865.jpg



以上の測定結果を元にして図に起こします。




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_20182907.png


測定値は上クランク左側だけ0.01mmの違いがありましたが、ノギス測定によるものなので一旦無視。上下左右はほぼ揃っていると仮定し、おそらく設計上はこうであろうという形で図に表しました。

まずクランクウェブの出っ張り部分。オイルシールと擦れる部分の幅は、実測で6mmとなっています。ただしこの出っ張り。ウェブと一体形成になっており、切削のr加工が施されているので有効幅は5~5.5mm程度となります。

オイルシール幅は5.5mmとなっていますが、カタログ値では5mmとのこと。しかし、シールに『55』という記載があることと、実測で5.5mmくらいの厚みに読み取れることから、今回は幅5.5mmとしました。オイルシールはイタリアのオイルシールメーカーであるFP製の物が採用されているのですが、もしかすると現在では同寸法のものは取り扱っていないのかもしれません。

このオイルシール。形状が特殊で、図の断面形状の通り台形っぽい形をしています。そして、その台形の部分である約1.5mmの厚みが、1次圧縮容積側の空間に飛び出す格好となっています。なので、ケースに圧入されている厚みは4mm分。

クランクの出っ張り部分の幅が実測で65mm、クランクベアリングのクリアランスは65.3mmでした。したがって、両端に0.15mmずつの隙間が設定されていることが解ります。
これはラジアルボールベアリングにおける『固定側軸受』と『自由側軸受』の概念によるもので、高速回転による発熱とそもそものエンジンの発熱によって、運転時のクランクシャフトが軸方向に熱膨張することが前提とされています。

・・・・の、はずなので、それを確認します。



【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_00555312.jpg

動力伝達側となる右側のベアリングはめあい面の径が25.00mmなのに対し、




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_00555325.jpg


ジェネレーター側は24.99mmという値になっていました。

したがって動力取り出し側が『固定側軸受』、ジェネレーター及びピックアップギア側が『自由側軸受』の設計ということで間違いは無いですね。

画像でははめあい面の変色が確認出来ますが、これはおそらく『フレッチング』という現象によるもの。ベアリングと軸のはめあい面が、熱膨張による軸方向の微細な移動を繰り返すので、摩耗してこういった表面になるのです。
これが進むと、いわゆる『軸が痩せた』状態になるので、再メッキなどの処置が必要となります。測定して値に問題が無ければ引き続き使用が可能。

剛性が必要な動力取り出し側を圧入にしてあるのも理に適っています。


(余談:フレッチング)

冷間と温間を繰り返すことで熱膨張による移動も繰り返されますので、例えば「毎日乗る」という行為はこういったはめあい面の消耗という意味では非常に『良く無い』と言うことが出来ます。
バイクとしては毎日乗った方が『調子が良い』と感じる人が多いと思いますが、同じ距離を走るなら1回で長距離走る方が、エンジンにとっては『良い』と考えることが出来るのではないでしょうか。





【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_00594887.jpg


図で「両端に0.15mmずつのクリアランスがある」としましたが、実際の組み付けは上の画像の様に固定側となる動力取り出し側を先に圧入します。なので実際は、固定側の方はクランクの出っ張りとベアリングの内輪が接触状態にあり、自由側軸受となるジェネレーター側にクリアランスを0.3mm取る設計になっていることになります。



【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_20182947.png



図にするとこんな感じ。
そうすると固定側のオイルシールとのクリアランスが0.5mmになるので、r加工を踏まえるとかなりギリギリの設計になっています。

そして実際の熱膨張に関しては、単純計算となりますが温度変化を60度と仮定すると、クランクシャフトの伸びる量は約0.07mmとなります。したがって固定側を始点とし、自由側のすき間0.3mmが多く見て0.2mmほどまで『詰まる』ということになります。その時、オイルシールとクランクウェブのクリアランスは0.7mm。

以上の内容から、全てのクリアランスに「設計上の」問題は無さそうであるということが解りました。


そう。図面の上では問題が無かったハズのものでも、実際は違うわけで・・・・




【500-Vdue】(第16話:クランクベアリングシール) <第5章:測定> 〜目覚めよ!冥界の支配者〜_e0159646_01282152.jpg


それがこちら。
4ヶ所のシールのうち1ヶ所だけ傷が入っていたのです。ここはジェネレーター取り出し部になるのですが、ここのシールだけ圧入がちょっと甘くて飛び出した状態になっていたんですよね。おそらくクランクウェブと擦れたのではないかと考えられます。

冷間時には、ウェブとのクリアランスは0.8mmの設定になっており、温間時は想定0.7mm程度。なので一応『設計上』に問題は無くとも、組み付け方が悪ければこのような事態になってしまうわけです。

その原因は単なるシールの打ち込み不足か、あるいはベアリングが奥まで入っていないのか。はたまた、ベアリングの座面の削り(深さ)が足りないという可能性も考えられます。
また、クランク出っ張りの根元のr加工によって有効幅が減少していることも挙げられます。それにそもそも、クランクの芯が0.2mmというレベルの振れが確認出来ているので、偏心したウェブの影響も複合的に発生しています。

設計上わずか0.7mmのクリアランスを維持するためには、それ以外の要素に全くの不備があってはいけないということ。

いずれにせよ、原因を確実に特定するためにはシールとベアリングを取り外す必要があるのですが、その場合新品のベアリングとシールを入手してからでないと作業が出来ません。
最悪ベアリングは再利用出来るとしても、シールは外す時に綺麗に外せませんから再利用は不可。外したは良いけどシールが入手出来なくて『詰み』になってしまってはいけないので、現在FP社に入手の可否を問い合わせ中となっています。

今回のシールと同寸法のものはFP以外で発見することが出来ませんでしたので、汎用同等品は期待薄。寸法変更を考えるか、特注で依頼するしか方法は無いでしょうね。
ただ、現在の品番によれば幅は5mmとなっているので、0.5mm分余裕のある設計に変更されているんですよね。もしかするとdueの為だったりして???

イタリアの有志の方の情報によれば、「このオイルシールには問題があったから対処した」とされているのですが、その方法が砂型で『ケースの作り直し』となっていたので、流石に私の努力の範疇を超えています。なので、現状では純正シールをなんとしてでも入手しなければならないということになります。

いや〜面白くなってきましたよ〜\(^o^)/♪


名前
URL
削除用パスワード
by tm144en | 2025-08-26 00:00 | bimota 500-Vdue | Comments(0)

カメラとバイクとエトセトラ


by だいちゃん