【500-Vdue】(第11話:1次圧縮容積⑨)<第5章:測定>〜目覚めよ!冥界の支配者〜
2025年 07月 18日
稚拙




プレートの上に『重し』を乗せることで、一定の安定感を与えることが出来ました。測定器の自重だけでは、頂点探しで動かす時の力加減でまだ微妙にバラツキが出てしまったんですよね。




あまりにも稚拙。

せっかくジグを作って精密に測定しようとしているのに、測定の『やり方』がよろしくない。
シリンダー座面部が斜めになっているので、そこに押しつけるようにして測定すると結果にバラツキが出てしまいます。
それでも押さえつけ方を一定にすることで、再現性を高める努力はしたのですが・・・まぁちょっと稚拙だったかなと反省。
この結果を受けて、何かしらの対策を施すとなれば、「測定ミスがありました」なんてのは許されることではありません。

そこで一旦場所を移し、容積測定を行った時の要領で座面を水平に固定。

この状態で測定することにしました。測定器を不必要に押さえつけることがないので、これだけでも充分安定した測定が出来ますが、さらに

『重し』の効果は抜群で、これ以降の測定結果は「ビシッ」と揃うようになりました。
ーーーーというわけで、厳正なる再測定の結果は以下の通り。

・・・・と、その前に。前回の測定で行わなかったことがあります。それは、クランクシャフト自体の『芯』の測定です。つまり、測定器を当てた状態でクランクを回転させ、ゲージの値に変化が無いかを確認したのです。
するとどうでしょう。ものの見事に針が動くではありませんか!!!
つまり・・・それって・・・・
「クランクシャフトが振れている」
ってこと!?
上下クランクの左右シャフトを、それぞれ回転させて測定したところ、上死点で値が高くなり、下死点で低くなるという一定の動きをしていました。
したがって、

クランクウェブがこの様に『ハの字』に開いているということになるのです。
「え!?でも、両側のベアリングに通ってるから、その外側は芯が出るのでは?」
おそらく、ある一定以上の開きに関してはベアリングの穴を通すことで無理矢理修正されることはあるかもしれません。しかし、クランクに使用されるベアリングはC3程度の内部すきまの大きいものが使用されています。つまり、内輪と外輪の間には比較的大きな『ガタつき』が発生しますので、その分の動きでクランクシャフトの偏心を許容する格好になっているのだと考えられます。
(逆にこれが運転時となればその内部すきまは熱で縮小するので、シャフトの偏心による負荷がベアリングに過大にかかることが想像できます。恐ろしいですねぇ・・・)
今回の測定によって判明した、クランクシャフトの偏心は、
<上クランク>
左→0.11mm
右→0.19mm
<下クランク>
左→0.06mm
右→0.1mm
といったものでした。ただしこの値は、ベアリングから測定ポイントまでの距離で変わってしまいますので、シャフトの飛び出し量が多いものは値も大きくなっています。なので、あくまで参考値であり、振れの絶対値として見ることは出来ないので注意が必要になります。
以上の点を踏まえ、上死点下死点それぞれで座面からの距離を測定した結果が以下のようになりました。

前回の測定時、クランクは上死点と下死点の中間くらいに位置していました。なので、測定結果は今回とは異なっています。
また、クランクシャフトの偏心量が多い所に関しては値の差も大きくなっています。
ここまでが先日のツイッ・・・Xに投稿した速報の内容でした。
そこから一晩考え、偏心しているものに関しては、その偏心量の半分の値で調整することで、計算上の『芯』の値となることに気がつきました。
というわけで、最終的な測定結果が以下の通りとなります。
<上クランク右>-0.02 <上クランク左>0
<下クランク右>0.0475 <下クランク左>0.035
今回の測定では常に<上クランク左>を基準点にして数値を調整しています。
『左』が右にきているのは、車体の左は正面から見ると右になるので、判りやすさを優先してこのような記載にしています。
で、測定結果を受けて、やはり間違いなく下クランクの方が1次圧縮容積が少ないことが判明しました。
ただし、クランクウェブで測定した『0.07』という値よりは小さいので、30cc分の容積差とはなりません。
また、座面の傾きも上クランクは左下がり、下クランクは右下がりになっているので、前回の記事で書いたように切削機械の『ナナメ』がそのまま反転して反映されていると考えられます。ただし、その値も前回の測定結果よりは少なく、上下とも左右差0.02mm以下という結果となりました。
以上の結果を受け、結論としましては・・・
ケースを割る
しかないでしょうね(涙目)
いや、割ってどうすんだって話ですが、まぁクランクの芯出し?・・・をするしかないでしょうね・・・
ファンキーさんの証言によると、「振動がひどくてメーターがソッコー割れた」とのことでした。しかしその後の勉強で、シリンダー角90度の2軸同爆エンジンにおいては、1次慣性力を打ち消し合う構造になっていることを知り、「振動はそれほど発生しないはずでは?」と考えるようになっていました。
ですが、それは設計が理想の状態になっていればこそ。
クランクウェブの重量バランスは然ることながら、『芯』もしっかり出ていないと、別の要因で振動が発生してしまいます。
今回の簡易的な測定では、クランクシャフトの先端で最大0.2mmにも及ぶ偏心状態となっていましたので、その影響は甚大であると考えても良いでしょう。
また、この0.2mmの偏心部は、ちょうどオイルシールに差し込まれる部分。コンロッドベアリングにオイルポンプからエンジンオイルが送り込まれる『入り口』の部分が、0.2mmも偏心していたら、もしかするとオイルシールのリップからエンジンオイルが漏れ出している可能性もあるかもしれません。
上シリンダーには軽い焼き付きの症状が出ていましたので、もしかするとこれが根本原因となり潤滑不良の引き金となっていたと考えることも出来ます。
ただ、シリンダー壁には別ルートでオイルが送り込まれており、このクランクシャフトからはあくまでコンロッドベアリングの潤滑がメインではあります。とはいえ、余ったオイルは1次圧縮室内でピストンスカートの隙間からシリンダー壁面に付着する分もあるでしょうし、燃焼室に送り込まれたあとにピストンリングの隙間に落ちていく分もあると言えます。
その分も踏まえ、全体容量として足りなくなってしまい、シリンダーに傷が入ってしまった、という可能性はあるかもしれません。
ーーーーいや〜・・・やはりここまできたかぁ・・・
「1次圧縮容積を計測するぜ!」から始まった今回の一連の流れ。それによって、クランクシャフトの無視出来ない『振れ』を発見するに至りました。
1次圧縮容積を計測しようと思わなければ、クランクの振れにも気が付かなかったというか、薄々思っていても無視していたかもしれません。
しかし今回こうしてまざまざと数値を突きつけられてしまうと、もう逃げるわけにはいきません。
とはいうものの、バイクをバラバラにするのは『ノリ』でやっちゃえますし、シリンダー外すまでは造作もありません。しかもdueはカセット式ミッションなので、ミッションの分解も容易でした。
しかし、クランクケースの分解は土俵が違います。
2ストロークエンジンにおいて、クランクシャフトというのは非常に重要で精密で繊細なパーツと言えます。シリンダーを分解するのとは訳が違い、ケースを割るという行為は、そのクランクシャフトに最新の注意を払う必要があります。クランクベアリングも同様。
とはいえ、ケース割りはtm125でも行いましたし、ミトも分解済み。過去にはRMXやフサベルなどやってきましたので、精度はともかく『やってやれないことはない』とは思っています。
しかし今回相手のdueは2軸クランク。2つ割りのケースにクランクシャフトが2本突き刺さっているわけですから、分解においても2本のクランクシャフトを『同時に』押す必要があります。
市販のクランク押し出しツールは当然1軸用。これを2個同時に使ってやってやれないことはないかもしれませんが、ツールの特性上手が足りなくなりますし、足りたとしても高精度とは言えません。
じゃぁどうするか?

作るしかないでしょう。専用工具を・・・
by tm144en
| 2025-07-18 01:00
| bimota 500-Vdue
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