【DB7】肩慣らしのはずがツーリング(本章)
2019年 07月 16日
「DB7は乗りやすいですか?」
「いいえ、乗りにくいバイクです。」
姫で走る時はキホン路面しか目に入っていない。したがって、担いだカメラを構える時はガソリンスタンドかコンビニしかない。
綺麗な景色と、それが一番似合うマシンに乗っているというのに、なんとも皮肉な話である。
寒がりの私は、ウェアーはいつも厚着をする。走っている時に寒くなってしまったらどうすることも出来ないが、暑い分に関してはどうにでもすることができるからだ。
この日、気温は20度以上にはなりそうだったが、マシンと私の『肩慣らし』のつもりでいたから、ツナギの下にゴアテックスのウィンドブレーカーを上下に着用。
しかし、走り出してみると『肩慣らし』がいつしか『腕鳴らし』に変わり、迫り来るコーナーを次から次へとかわしていた。
当然運動量は段違い。体温も上昇し、いくら透湿性のあるゴアテクスと言えど、この発汗量には間に合わなかったのである。
私自身、厚さへの耐性は高いのだが、高い集中力を維持する為上のゴアテクスだけ脱ぐことにした。
観音様に見守られるこの場所は芦別。国道452号線、通称『桂沢』を走ってきて、ガソリン給油とコンビニ休憩をした。
桂沢は『バンピー』である。路面のウネリがひどく、気を抜くとすぐに吹っ飛ばされそうになる。勿論、常軌を逸した速度での話だが・・・
DB7は、まるでマシン全体がサスペンションのように、路面への追従を体現する。フレームの下、サスペンションだけが動いてライダーにその凸凹を感じさせないF4に対し、DB7は有り有りとその路面の形状を表現するのだ。
それゆえDB7は、アクセルを開けることに恐怖心が勝ることが多々ある。F4にはそれが無い。
だが逆に、公道ではそれこそが『安全』に寄与すると考えている。ライダーに下手くそなアクセルを『開けさせない』というマシンのポテンシャルなのである。
だから、DB7は決して乗りやすいバイクとは言い難い。今回のようなバンピーな桂沢などでは如実に現れる。
だが、乗りやすいから『良いバイク』ということにもならない。『良いバイク』の定義にもよるが。
前段で述べた『下手くそなアクセルを開けさせない』というのが重要で、要するに根拠のあるアクセルなら開けて良いのだ。路面の状況、サスペンションの状態、ライダーの状態、その全てが高次元でバランスした時、開けるアクセルに制限など無い。
そんな大事なことを教えてくれたのが、ほかならぬDB7であり、私のお姫様なのだ。そんなマシンが『良いバイク』と言わずに何と言うか。
『乗りやすいバイク』というのは、偏に褒め言葉に当たらないから注意しなければならない。
例えば、プロのライダーが「乗りやすい」と表現するのと、素人が「乗りやすい」と表現するのではまるで意味が違う。
プロの、プロたる所以のマシン操作に機敏に反応し、表現してくれるマシンが「乗りやすい」ということであり、素人の「乗りやすい」は「おっかなくない」という意味である場合が殆どなのだ。
DB7は決して乗りやすいバイクではないし、多分プロの目から見てもそんなに高い評価を受けるマシンでは無いと思う。
ただ、サーキットでは無い『公道』という舞台を、暗黙の世界で走らせる時、これほど安全で『楽しい』マシンを私はほかに知らない。
バイクは、『路面と前後輪タイヤ』その2つの接点でしか存在し得ない。だからこそ、そのたった2つの接点から得られる情報を如何にしてライダーへ伝えるのか。それこそがそのマシンの真骨頂であり、メーカーの腕の見せ所でもある。
勿論、敢えて情報を『伝えない』という手法もある。BMWやtmの様に、挙動を鈍感にしライダーの負担を減らすのだ。
DB7の乗りにくさは、私の下手くそなスキルを如実に現している。
そんな、歯に衣着せぬ物言いのツンデレ姫が、とてつもなく愛おしいのである・・・
by tm144en
| 2019-07-16 06:28
| BIMOTA DB7S
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