2018年 08月 11日

【tm125EN】灰色の空に希望を(考察編)

先日の遭難事件の記事のコメントにて、とても有意義なご質問を頂きました。
ちょうど私もその件について考えをまとめていた所でしたので、今回それを記事にしてみることにしました。


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遭難した時、手足が痺れて硬直したという体験が言い知れぬ恐怖と絶望感を生みました。結果的に無事帰ってくることが出来たから良かったものの、一歩間違えれば最悪命を落としかねない状況だったとも言えます。
まぁ、真似する人はいないと思いますが、同じ過ちを繰り返さない為にも、当時の私に起こった現象を可能な限り思い起こし、考察していきます。

まず、ご質問の内容ですが、

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a 当日の気温や日射の状況(アメダス記録などで参照可能です)
b 当日の体調
c 体調を悪化させた最大の要因は、どの辺りでしょうか?かなりの発汗があったのではと推測しています。
d 脱水症のように見えますが、実際の所どうでしょうか
e 今回の伝説から得た、注意点やアドバイスなど



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この様な内容でした。
文章をまとめるに当たって非常に的を得ており、考察の道筋として大変参考になるご質問でした。


a)

まず当時の気温ですが、現場の正確な気温は調べられなかったのですが、体感的には20℃+α程度で、天気は曇り、やや霧雨でした。やや湿度の高い状態ではありましたが、一般的に考えて、スポーツに適した天候だったとが言えます。
b)
夜の仕事がAM3時に終わり、そのまま準備をして山に出かけ、AM6時から走り始めたので、遭難したAM11頃はすでにフラフラの状態だったと言えます。ただし、今回に限らず10数年来いつもその様な状態で日曜日を遊んでいるので、「いつも通りの体調」と言えば、その通りです。
c,d)
当初、熱中症か脱水症を発症したのだと考えていました。運動して汗をかいて水分補給が出来ていなかったのですから。しかし帰宅後、それらの初期症状の項目を見てみると、どれも私の状態に当てはまらなかったのです。
そこである仮説を立てました。当時、かなり長い時間ゼェゼェハァハァやってました。その直後に手足の痺れ及び硬直、めまい、視界の混濁といった症状が出ましたので、もしかすると『過呼吸』が直接の原因ではないかと考えたのです。
試しに深呼吸を連続的に行うと、20秒程でめまいや手足に痺れが出てきますが、それがまさにあの時の私の症状とそっくりと言えるのです。(20秒程度ではまだ初期段階で、当時はおそらく1分以上、2〜3分は過呼吸状態が続いていました)
では、なぜそのような過呼吸の状態に陥ってしまったかといいますと、以下の要因が考えられます。

1)行き止まり、及びバイクの走行不能状態によって、精神的不安、ストレスが生じた。
2)バイクを動かす為に激しく動き、体温の上昇、発汗、体力の低下。
3)通気性の悪いインナーウェアーによって、発汗による体温の発散が効率的に行われなかった。
4)この段階で飲み物を飲み干してしまったことによる切迫感。

ただ、非常に疲れる、体力を異常に消費する、といっただけでは過去の経験から過呼吸にはなりません。
おそらく、『精神的不安』というのが、引き金になっているのだと思います。(1)と(4)の部分です。当時の私は認めたがらないと思いますが、おそらく軽いパニック状態に陥っていたのかもしれません。
もちろん、ちょっと不安を感じただけで過呼吸になってしまうほどメンタルの弱い人間ではありません。山で道に迷ったり、バイクがスタックすることなど数え切れない程経験してます。しかし寝不足に始まり、体力の低下といった幾多の要因が重なったことで、過呼吸状態に陥ってしまったのではないかと考えられるのです。
そして、問題なのはインナープロテクター。
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BeCooLというエアーコントロール素材が採用されてはいるようですが、パンチングメッシュのように、完全に筒抜け状態の生地ではないので、激しい運動に伴う発汗や体温の上昇には追従できません。私は焼き物の仕事をしており、サウナにも長時間入っていられるほど暑さへの耐性はかなり高い体質ですが、このプロテクターは発汗による効果的な放熱が阻害されます。先日の山登りの時も、「あれ?この程度の運動量で?」と思うほど体力の低下が激しかったですから、放熱性が低いと考えられますね。
とはいえ、先日の大転倒や崖転落の際に体を保護してくれた性能は最大限に評価できるので、一長一短と言えるでしょう。


e)
同じ過ちを繰り返さない為に取るべき対策としては、「無茶をしない」の一言につきます(笑)
しかし、その『無茶』をどうしてもやりたくなってしまうので、それであれば(1)〜(4)の原因を最大限取り除くことを意識するのが重要だと思います。
まずはやはり飲み水の確保。「ちょっと多いかな?」という量を持っていくことが重要。当時も、あの時点でちゃんと飲み物さえ飲めていれば、心は落ち着いて呼吸も整ったのではないかと思います。午前中の時点で2リットルを摂取していたのですから、体内水分量が足りなくなるレベルでは無いはずなのです。それよりも、「水が喉を通る」という行為に意味があって、特にあの時のような切迫した状況では赤ちゃんのおしゃぶりの様に重要な行為だったと言えるのかもしれません。
次に、マシンを力ずくで動かす時は、せめて上のプロテクターだけは脱ぐようにする。当時はインナープロテクターの上にジャージとエンデューロジャケットも着用していたので、20°Cの気温で作業するにはやはり着すぎでしたね。「暑さには強い」という慢心もあったと思います。そして、もうそんなに若くも無い・・・(涙)
あとは、万が一過呼吸になった場合の対策として、意識的に呼吸を少なくする、吸うより吐くを多くするなどといった対処ができることを今回学びました。ヘルメットを被って意図的に換気を悪くするのも手かと思います。(ただし、ビニール袋などを頭から被ってしまう行為は、逆に2酸化炭素が多くなりすぎて危険なので、あくまで「意識的に」調節するのが大事なのだそう)

「冒険」とは言っても、それはあくまで「ごっこ」であるべきで、本当に身を挺してやることではありません。安全確実な行動を取る為には、
『常に冷静に、論理的に』
というのが、もっとも重要なことだと思います。


by tm144en | 2018-08-11 04:15 | tm125EN | Comments(2)
Commented by KKB at 2018-08-11 21:14 x
考察編お疲れ様でした。
ウェアの記載を拝見しました。通気性が悪いということは、想像するに走行中は相当寒いのですね。
その一方で身体を激しく動かす場合は痛し痒しですね。

無茶や限界の挑戦、未知の探求、冒険が人類を進める原動力であったと思います。
それがゆえに、心の欲する所に従えども矩を踰えず(論語)という境地が理想ともされています。
『常に冷静に、論理的に』。その調和。
登山にも通じるものがあります。今後の山行の参考とさせて頂きます。

貴重な考察をありがとうございました。

ところで、ヘルメットの件は失礼しました。
ヘルメットを脱いで顔下半分に当てることを想定していました。適度な隙間もありそうですが、紙袋法そのものが最近は推奨されていない方法でした。お詫びして訂正します。

それでは、これからも冒険譚を楽しみにしております。
Commented by tm144en at 2018-08-14 06:49
こちらこそ、良いきっかけを与えて下さってありがとうございました。うまく文章がまとまらなかったですが、思いの丈はぶちまけることができたと思ってます(笑)
ウェアーは、私が極端に寒がりというのもあって、保温性の高い物を選ぶ傾向にあるのですが、普通の方なら7月8月はほとんど裸でも乗れる様な天候です。

山は、遠くから眺めていれば美しいのに、実際に登れば険しさの方が多く、でも頂上から見渡す景色は感動に値する。
まさに人生そのものだなぁと思います。
ですので、山との向き合い方は、その人の人生訓とも言えるのかもしれませんね。

過呼吸の対処法も色々調べたり考えることができました。ありがとうございます。

それでは今後ともよろしくお付き合いの程お願いいたします☆


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