2018年 07月 24日

【tm125EN】灰色の空に希望を(第1話)

これは私が、九死に一生を得た真実の物語である・・・

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その日の早朝。楽しかった先週の思いを引きずりながら、またも同じマシンである山へと車を走らせた。

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北海道名物の熊出没看板。良くも悪くも見慣れてしまったせいで、あまり大きな危機感としては持っていないのが正直な所だ。仲間内で熊に遭遇した話は聞いたことがあるし、自身もバッタリとはいかないまでも走り去る姿や遠目に見たことくらいならあるのだが、だからと言って怖くて山に入れない・・・という程の思いにかられることも無いのが現実。

その最たる理由は、やはりバイクだからであろう。けたたましい排気音を轟かせながら走っているのだから、熊の方がびっくりして逃げていくので、バッタリ出会うということに普通はならない。危険なのは、人間側に『音』が無いこと。
だから、山歩きなどの時はラジオを鳴らしたり、仲間と会話をしたりして人間の存在を熊に『アピール』することが大事とされている。手負いの熊で人間に恨みをもっているなどの特殊な状態でなければ、その対策で基本的には大丈夫なのだ。

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そばに川が流れ、木々に囲まれたこの場所が最近のお気に入り。これから始まるライディングに向けての精神統一と平常心に一役買っている。
こういったことは、安全なライディングを心がける上で非常に重要だと考えている。比較的危険な事をしようとする時は、その前段階は可能な限り『いつもと同じ』にすることが大事なのだ。
例えばいつもと同じ時間、同じ場所、同じ食べ物、ブーツやグローブなど着用着は全て右からなど、自分の『ルール』を徹底し、いつもと違う行動はなるべくしないようにするのが望ましい。

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そしてこの日も、いつもと同じように出発の段取りが整った。
先週と違う所と言えば、雨が降っていなかったのでスタートは6時にすることが出来た。今回持ってきたガソリンは10リットル程。ゆっくり時間を使ったとしても、午前中には走り終わる予定である。

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SAMURAIは勿論搭載されている。前回よりも固定の紐の長さを短くし、着脱をしやすくした。ヤル気マンマンである。

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これも前回同様、紙の地図とiPhoneGPSのセット。このセットがかなり高性能であることが身をもって体感した。
地図に記したGPS座標は分岐点のみであるので、該当の分岐点以外で、iPhoneに表示された座標から地図上で正確に位置を知ることは出来ないが、いくつかの分岐点の座標からおおよその見当は立てられるので、バイクで林道を走る程度であればさしたる不便は無い。

さて、その地図を見ながら最初に向かった道は、

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前回諦めたこの場所。
このルートが開拓できれば、いつも走っている林道をショートカットできるので、何かと便利。

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倒木は谷に向かって斜めに倒れているので、フロントアップで越えようとして万が一フロントが取られてしまうと、そのまま谷へまっしぐら。ちょっと危険なセクションとなっている。
やはりここは安全を考えて、切断するのが望ましい。


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早々にヤル気マンマンである。朝の6時ころは、私にとっては体力のピーク時で、1日の内でもっとも元気な時間帯なのである。

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木を切る時は、その木にかかっている力の向きを考える必要がある。
例えばこの場合、下向きに力がかかっているので、下からの方が切りやすい。逆に上から切ると下方向への荷重で上側に閉じる力が働くので、ノコギリが挟まれて引けなくなってしまうのだ。

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楽勝。そして、楽しい!

さぁ、どんどん進もう!

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と、ものの数十メートル進んだ所で今度は崩落のポイント。

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脇に目をやると、通り抜けられそうな場所を見つけた。

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手前で横たわる木を切れば、浅い川から反対側に渡ることができる。

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ついでにその手前側にあるこの木も切ってしまう。これが無い方がマシンが通りやすい。

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開通。

文字通り、山を切り開いて先へと進んでいる感じが非常に楽しい。
元来、こういった木は切らないでテクニックで越えるのを美徳としていたのだが、失敗すると痛い思いをしたり、そうでなくても余計な体力を使うハメになるので、安全確実な方法が今は尊いと感じる。オフロード暦17年。それだけ歳をとったということか・・・いや、若い頃の様な『無鉄砲さ』が成長したと考えるべきか・・・とはいえやってることは全体的に考えれば『無鉄砲』に違いはないのだが。

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ところで、先ほどからチラホラと見かけるこの様な道があるのだが、だれか先人が走ったワダチなのだろうか?
しかし、どうもそうとは思えない。もしかすると、鹿の移動ルートなのでは無いか?
『鹿のワダチ』。これが案外良い場所を通っているので、こちらとしてもこの道を辿りたい衝動にかられるのだった。

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さて、先へ進むことまた数十メートル。今度はかなりの大木が横たわっていた。さすがにノコギリの直径を超えていたので切ることが出来ないが、下にスペースが空いているのでくぐって向こう側へと行くことができる。

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木をくぐった先には川が流れており、遠くへ目をやるとまだ先へと進めそうな場所がある。

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とはいえ、それはもはや『鹿のワダチ』。到底森林管理局が作った『林道』とは呼べない道である。

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朝霧の舞う中、私は地図を離れ、鹿に誘われるがままに山の奥へ奥へと進んでいった・・・

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進んでも進んでも、そこにあるのは獣道。まともな神経の持ち主であれば、とっくに引き返しているであろう・・・

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しかし、シートレールにくくりつけたSAMURAIと、tmというマシンが『進め!戦え!』と私の背中を押す・・・

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どう考えても、この先が目的の林道につながっているとは思えない。だが、もはや目的が『それ』では無くなっていた。

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「この道を進んだ先には、一体何があるのか?」

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この、私を突き動かす原動力の正体は『好奇心』。

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だが時として、それは危険と隣り合わせ。
深追いは厳禁。冒険家にとって引き返す『勇気』とは、『好奇心』よりも強く持たなければならない重要な心構えである。

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鹿の誘いから目を覚まし、一旦ベースポイントまで戻って来た時には時刻はもう8時になろうかとしていた。
バイクに乗るよりも、木を切ってる時間の方が長かったような気もするが、とても楽しい時間だった。

2時間という時間が経ちそこそこに体力を消耗したので、2リットル背負っていたキャメルバックのドリンクも、残りは半分以下となっていた。
後半戦を走るに当たって、前回はこのタイミングで新たにポカリスエットを1.5リットル補充したのだが、結局その時はそれには殆ど口をつけず大量に余してしまった。さすがに数時間の内に2リットル以上の水分補給は体が受け付けなかったのだ。
だから今回は、最初に持ってきた2リットルだけとし、その範囲で楽しむ分だけで収めようと考えた。

その判断が、のちに最悪の事態を招くとも知らずに・・・


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いつもは撮らない自撮り写真。

まさかこの写真が、あわや人生最後の写真になろうとは、この時の私は知る由もなかった・・・


by tm144en | 2018-07-24 05:23 | tm125EN | Comments(0)


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