【DB7】フロントフォーク組立
2016年 06月 08日
日曜日は、とにかく地味な作業から始まった。
外はこんなにも晴れ渡っているというのに。薄暗いガレージに一人引き篭り、机に向かって小さな部品をひたすら磨いている。
哀しいかって?
そんな感情は微塵もない。確かにバイクは乗る為の物だが、乗る『だけ』の物ではないからだ。
パーツ一つ一つの役割や動きを想像していれば、実際に乗らずとも心は既に走り出している。
むしろ、マシンがどんな状態か判らないで走っていることの方が、よっぽどのストレスである。
リーフスプリングについた汚れを、一枚一枚コンパウンドで磨いていく。
この汚れはおそらくスラッジが染み込んだものであろうが、当初これは模様だと認識していた。しかし、よく考えてみればそんなはずはない。
サスペンション屋さんであれば、超音波洗浄とやらで完璧にキレイにするのであろうが、当然そんな物は無いのでパーツクリーナで手作業である。
汚れを落とすのは当然であるが、ウエスの『毛』が残るので、それにも気をつける。
それでも、空気中に舞っているダストもあるし、完璧な洗浄とは程遠い。
フロントフォークはリアダンパー程の高速ストロークでは無いので、そこまで気を使う程のことは無いのだろう。
しかし、前回オーバーホールをした時は『そこそこ』の作業だったが、今回開けた時に確認すると、リーフスプリングの隙間にビッシリと汚れが残っていた。
COMP側アジャスターを分解した際、
この直径0.1mm程の小さな『球』」をすっ飛ばしてしまい、泣くほど床じゅうを這いつくばった。
ようやっとパーツ類の洗浄を終え、次なる段階へと進む。
アンダーブラケットに取り付ける前にやっておくべきだったのだが、インナーチューブの内側が非常に汚れている。
再コーティングの際の金属粉などの汚れだ。
できれば潤沢な水などで洗い流すのが良いうのだろうが、そうもいかないので、松居棒ならぬ
だいちゃん棒を製作。これにパーツクリーナーを吹き付け内側をこすることで対処した。
いよいよ組み立ての準備が整った。
ダンパーカートリッヂの取り付けであるが、前回これを緩める時かなりの力を要したので、締め付けの際も力一杯締め込んだ。
しかし、それが原因で今回カートリッジの蓋部分だけが外れてしまうという事態になってしまった。
そもそも、このパーツの適正締め付けトルクは如何なものなのだろうか?
直径がそこそこ大きく、ネジピッチも細かいことから然程大きな力を要せずとも十分な静摩擦力を得ることが出来るはずである。
また、大きな締め付けの軸力を発生させる必要性も無いと考えられるので、締め付けトルクは、止まってからプラスα程度で良いと判断した。
アルミのカートリッヂとアルミのブラケット同士の締め付けなので、強い力の締め付けはむしろ大変危険である。
通常、鉄同士の締め付けの場合、止まってから締め込んでいった際の手に伝わってくる感触は、鉄が伸びている応力、所謂『弾性変形』によるもの。
鉄は弾性変形に富んでいるが、アルミの弾性変形は非常に狭いので、鉄を締め付ける時の感触とはまるで違う。
むしろ、そのような手応えがあったのであれば、それはアルミが『塑性変形』を起こしてしまっている。つまり『ノビちゃった』状態。
したがって、アルミ同士の締め付けは非常に硬く、また噛み込みやすいので注意が必要なのだ。
そこで今回、ネジ山部分にフォークフルードを塗布してから取り付けることにした。
もしかするとそれが当たり前だったのかもしれないが、この手法をとることで締込みにおける正確性が向上するのだ。
締め付けの力は、ほんの「クイッ』と程度。
ダンパーカートリッヂは常にスプリングの反力にさらされているので、はっきり言って緩む心配など無い。
ここまでくれば、残す作業はあと僅か。
フォークシールの取り付けが残っているが、これは慣れたものである。
フォークシールに使用したグリスは、ハイパーペースト。
特にこだわってコレと決めたわけでは無いが、リアダンパーの時にこれを使用し、余っていたのだから使うしか無い。
インナーチューブに入れる際、角の部分をビニールで覆うのがセオリーであるが、今回はそれを無視した。
オーリンズのインナーチューブは角が十分丸く削られているし、シールを入れる時に慎重に入れればシールに傷がつく恐れは皆無に思えたからだ。
シールを抑えるのは、専用工具がなくとも、テープで十分。まっすぐよりは少しずつずらしてすり鉢状にし、シールのリップ部分を買い日するようにすれば問題は無い。
アウターチューブを温め、インナーチューブを上側にして勢いをつけて押し込めば、一発で入れることが出来る。
無事シールの取り付けも終え、あとはフルードを入れるだけとなった。
このダンパーカートリッヂのエアー抜きは、少しテクニックが必要となる。
ただ闇雲に上下に動かしているだけでは、エアーが抜けきらないのだ。構造を考え、しっかりとやる必要がある。
ダンパーカートリッヂ内のエアーは、その中で行ったり来たりしてしまうのだ。
ロッドを引き上げた際、カートリッヂの上側部分が狭くはなるが、体積が完全にゼロになるわけではないので、エアーが残りやすい。
また、その時上側部分から下側部分にエアーが移動していても、そこからロッドを下に動かすとまた上側に戻ってしまう。
インナーチューブ側に戻るのは全体量の何割かなので、ロッドの動作全てがインナーチューブ側との行ったり来たりではないのだ。
テクニックと言っても明確なものではなく、動きの速さと量を変えることでエア抜きを行うことが出来る。
素早く小刻みに上下動をしたのち、大きくゆっくり動かす、、、といった具合。
、、、あれ、待てよ!?
ダンパー外した状態で、もっと論理的にエア抜きする方法があるな〜。
あーでも、それだと、ただのフルード交換の時は出来ないというか、わざわざ外さなければいけないのか。。。
あれ、というか、そもそも、カートリッヂ外さないで、ちゃんと中のフルード全部出てくるのか?
アレ!?
構造は理解してるけど、なんか色々疑心暗鬼になってきた。。。
、、、まぁ、なにはともあれ7ヶ月の時を経て、ようやく元の形に戻った。
あの雄叫びを、再び。。。
by tm144en
| 2016-06-08 04:32
| BIMOTA DB7S
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