リアダンパーの環境と対策

リアダンパーは、駆動時の接地性を高める為にフロントフォークに比べ減衰力値が高く設定されている。
しかも、リンク式サスペンションの場合はエンジンの後端寄りに設置される場合が多く、また取り付け部分からの放熱性も低い為かなり高熱の環境にさらされていることになる。
したがって、選定される作動油は粘度指数が高く、温度特性の良いものが使用されている。

サブタンク式の場合、空気への接触面積が増えるので作動油の冷却性を高くする事ができる。

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K1はリンク式サスペンションではなく、リアダンパーの取り付け部もマシンの後端に近い部分なのでエンジンからの熱は伝わりにくい環境ではある。

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DB7はリンク式サスペンションなので、リアダンパー取り付け部はエンジン後端寄りに設置されている。また、ビックツインエンジンの為熱的にかなり厳しい環境にあると言える。

そんな中DB7は、少しでも放熱性を高くする為の工夫がされていると考察することが出来る。

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まず、サブタンクがマシンと平行する向きに大きく後ろに張り出す形でデザインされている。
これによって少しでも冷えた空気への接触を試みているように見える。また、シートカウルとリアタイヤ及びスイングアームとの隙間が大きく取られているので、よりいっそうサブタンクへ新鮮な空気が流れるようになっている。

さらに、そのサブタンク自体にも工夫がされている。

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まるで空冷エンジンのフィンの様に、表面を凸凹の形状にして接触面積を増やしているのだ。
私の知る限り、このようなデザインのサブタンクを見た事はない。

オーリンズやマルゾッキなどは、かなり微細な凸凹形状をしている。
WPは多少の凸凹形状にはなっていた。
SHOWAは梨地仕上げが多い。
いずれも、放熱性を考えてのものだと推測できる。

しかし某サスペンション屋は、OH後にショップのステッカーをサブタンクに貼付けていた。しかも、厚いビニール製の物で、サブタンクの大部分を覆ってしまう程のサイズだ。SHOWAだったので表面の梨地が意味を成さなくなってしまう。
まぁ、それほどの悪影響は無いのだろうが、センスの良いショップステッカーが皮肉にもセンスの悪い物になってしまっている。

ーーーーリアダンパーの放熱性を考えた場合、本体を構成する金属の選定も大きく影響する事が考えられる。

使用される金属は主に鉄かアルミであろう。
新しい物は殆どがアルミである。

鉄とアルミの熱伝導率を比較した場合、アルミの方が圧倒的に高い。
したがって、アルミ製のダンパーの方が放熱製が高いのではないかと考えられるが、そうは一重に括れない。

というのも、いくら熱伝導性が高くとも材料に厚さがあれば実際の放熱性は変わってしまうからだ。

鉄とアルミを比較した場合、同じ厚さでの強度は鉄の方が高い。
『強度』という概念を一概に比較するのは難しいが、現実として、例えばオフロード車のハンドルバーで比較した場合、鉄製よりもアルミ製の方が肉厚に造られていることから結論づける事が出来ると考える。

従って、熱伝導率は高いが、肉厚に造らなければならないアルミと、熱伝導率は低いが肉薄に造ることが出来る鉄とでは、どちらが放熱性が高いと考えられるのだろうか?

ちなみに、フライパンでは、肉厚のアルミより、肉薄の鉄鍋の方が火の伝わりが早い。チャーハンを作る中華鍋が良い例と言える。極限まで薄くしても破綻しない鉄の『強度』に意味がある。
そして熱伝導性が悪いということは、火から離しても直ぐには冷めないので、振ってひっくり返すシーンでも鍋は常に高温を保つ。
しかし、アルミの鍋では、ひっくり返すシーンで火から離すと直ぐに冷めてしまうので、パラパラに炒めることが出来ない。
また、アルミの鍋は直ぐにボコボコに変形してしまうので、プロの現場での使い勝手は非常に悪いと言える。

従って、熱伝導率と強度の関係には大きなジレンマが存在するのかもしれない。。。
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by tm144en | 2014-10-03 09:52 | Comments(0)

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