【フサベル】整備振興会 神の手を持つ男

午前9時。波乱の幕開けである。

先日、チャレンジのヘッドライトに交換し、ツインバッテリー方式にしたフサベル。この加工だけで余裕で光軸は受かると考えていた。

そして、まずは光軸を会わせる為に整備振興会に向かった。
すっかり顔なじみになってしまった私は、「今度こそばっちりっすよー」等と浮かれていた。
早速マシンをテスターに掛ける。

問題は光量であった。15000以上無ければならないものが、前回8000程しかなかったのだ。
だが今回、バッテリーを2個積んだことでこの光量の部分がクリアできると考えていた。

しかし、結果は13000程。あと2000足りない。

私は落胆した。これで完璧と考えていただけに、なおさらだ。

さて、どうしたものか。バッテリーを2個繋いででもだめなのだから、こうなったら最後の手段である。

バッテリーとヘッドライトを直結する方法だ。これなら、バッテリーのパワーがそのままバルブに注がれることになる。

ただ、今回もあまり悠長な時間は無い。私は急いで、整備振興会の駐車場で作業を始めた。
もうこうなったら、完成度は度外視で良い。不本意ではあるが、「車検さえ受かれば良い」と考えることにした。
どうもこの部分に小さなコダワリがあったのだ。が、もうそんな事は言ってられない。

ヘッドライトの配線も、純正の線をニッパーでぶった切り、繋ぎ方もテープで固定するだけのやっつけ技。

バッテリーは『2個目』の方のバッテリーを使用することに。

ただ、この直結法。ライトは文字通り『常時点灯』になってしまうので、バッテリーのアース側の方にギボシを使用し、on,off出来るようにした。
検査場では、検査官の目を盗みこのギボシを繋ぐという手法だ。

作業を終え、再度光軸を会わせる為テスターに掛けると、16000程を指していた。
思わずガッツポーズが出た。
しかし、この時点ではまだ光軸が合っていない。

だが、光軸を合わせると今度は光量が13000まで下がってしまった。
なぜ!?と思うが、検査員の方は直ぐに解ったようだ。

光の焦点が合ってないのだ。

つまり、ライトには、光量と光軸とがあるが、もうひとつ『焦点』が重要になってくるのだ。
いくら高光量のバルブで光らせても、その光の収束が上手く行われないで、分散してしまったら、結果光量が落ちてしまうということなのだ。

コレは、ヘッドライトのリフレクターの小ささがネックになっている。リフレクターが小さい分、この焦点合わせがシビアになるのだ。
新車の時にすんなり通るのは、リフレクターがまだ新品だから、光の収束能力も高いのだろう。

この焦点合わせ。ヘッドライトに差し込んだH4バルブの差し込み具合で変わってくる。
テスターで確認しながらやった所、一番焦点が合った時、光量は30000を越えた程であった。

ならばと、光軸と焦点をあわせようとするが、ほんの僅かなズレで大きく数値が変化してしまうので、合わせて固定するのは至難の業を極めた。

時間が押し迫っていることもあり、あとは検査場のラインで、テスターを見ながら微調整をすれば良いと考え、一旦整備振興会を後にした。

陸運支局に着くと、なんということか、レッドバロンの行列が出来ていた。

私は一番最後である。待っているのは良いのだが、最後にラインに入る時は、検査官が付きっきりになるので、緊張するのだ。
特に今回はインチキをイッパイしなければならないので、背筋の凍る思いだ。

私は待っている間、とにかく新しくなったテスターの画面に慣れる為、ずっと観察していた。

数台分の光軸検査を経て、見方の要領も得た。
後は、ヘッドライトの配線を繋ぐタイミングと、画面を見ながらの光軸合わせだ。

しかし、事はそんなに簡単では無かった。
いざ自分の番になり、配線を繋ぐタイミングはバッチリだった。が、光軸テスターのボックスで仁王立ちする検査官。
テスターが動き始めて、ヘッドライトの光を拾い、現在値が画面に表示される。
その数値を見ながら、バルブを直接指で動かし、光軸及び光量を調節するのだが、検査官が邪魔で画面が見えない。
画面が見える角度で、ちょうど検査官が、まるで私の思惑を察しているかのように立っているのだ。
画面が見える位置まで顔を動かせば、検査官の胸に私の頭をうずめる格好になってしまう。それはキモイ。

結局、何も出来ぬまま一回目の検査は撃沈となった。

今の制度では、一日に3回までしか検査ラインには入れないので、闇雲に行う訳にはいかない。

そこで、一旦マシンを積み、再度整備振興会へと向かった。

そして、まずは駐車場でヘッドライトに少し手を加えた。
まずは、チャレンジのヘッドライト。『異形ヘッドライト』のポジションランプ部分を、テープで塞いだ。検査官が、ここのライトが、光軸に影響してるかもしれないと言っていたからだ。

あとは、バルブを固定している針金にテープを巻き、バルブをよりしっかり固定するようにした。どうも固定力が足りないのが原因かもしれない気がしたのだ。

その状態でテスターに掛けてみた。

先程とは別の検査官の方が作業に付いてくれた。恐らくベテラン風。さっきは横で口を出してるだけだったのだが、私が何度も戻ってくるので、いよいよ俺の出番かと言わんばかりの様子。

そして、ベテラン風が光軸を合わせ初めたのだが、ポンポン!とヘッドライトを叩くと、なんということか!
あんなにも苦戦していた光軸も光量もドンピシャで合ってるではないか!

まさに、ゴットハンド!!

すぐさま陸運支局へと舞い戻り、検査ラインへ突入した。

今度は、検査官は邪魔な場所に居なかったので、テスターに掛けながら画面を確認する事が出来た。
そして、その画面に映し出されている数値は、光量、光軸共に基準値を満たしていた。
私は、その画面の数値がそのまま変わらないよう祈り続けた。
そのまま。。。
そのまま。。。
そのまま。。。





『ヘッドライト ○』


よっしゃ〜〜〜〜!!!!
Commented by 混合燃料 at 2012-05-22 22:39 x
きちんと検査を受けようとする姿勢があれば、検査官も助けてくれる事が多いですね。
Commented by tm144en at 2012-05-23 11:23
検査官にもよりますねぇ。
頭カタイ人が、一人いるんですよ〜(笑)

今回の人は良い人でしたが。
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by tm144en | 2012-05-22 03:05 | HUSABERG fe650e | Comments(2)

カメラとバイクとエトセトラ


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